おかえりの言葉(短編・完結)
おかえりの言葉
ずっとミシミシと音を立てていた家の床が、とうとう落ちた。


支えていた木が腐り果てていたのだ。


理由は簡単だ。


ヒビのはいった天窓から雨が降るたびにこぼれ落ちていた水滴が染み込んで、植物でも育てるのかと思うくらい柔らかく床の板をふやかし、突っ張っていた木を崩れさせたのだ。


「そういえば、昨日、ミーさんが泣いてたよ」
 

信弘は落ちた床を足でいじりながら、こたつに寝転がっている兄の健人に話しかけたが、建人は興味なさそうに鼻を鳴らせた。


「健ちゃんは冷たいなあ」
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