俺様男子はお気に入りを離さない
3.ハプニング球技大会
まだ六月だというのに日差しが厳しい。
梅雨になるかとおもいきや今年の梅雨はたいして雨が降ることもなく、蒸し暑さだけが抜きん出ているようだ。

「あっついなぁ……」

肌に貼りつくようなじめっとした暑さに私は顔をしかめる。
グラウンドでは運動部の面々が元気いっぱいに部活動に励んでいた。

少し覗き込むとそこは陸上部。
でも御堂くんの姿はない。
足の怪我はまだ治っていないのだろうか。

そんなことを考えながらキャンバスに色を付けていると、ガララッといつも通り扉の開く音が聞こえた。
御堂くんだ。

「どうした芋子?」

「御堂くん、足の怪我治ってないの?」

「いや? なんで?」

「陸上部、行かないのかなって思って」

と、素朴な疑問だったのだけど、なぜだか御堂くんはムスッと不機嫌になった。

「芋子は俺が陸上部に行った方がいいんだ?」

そう問われると困る。
御堂くんが陸上部に復帰するということはもうここにはこないわけで、そうすると御堂くんとお喋りする時間もなくなってしまう。
かといって、御堂くんとおしゃべりしたいから陸上部に復帰しないでというのもおかしな話だし。

困惑していると御堂くんは私の隣にドカッと腰を下ろす。
いつもの定位置だ。

「陸上部はもうやめるかも」

「えっ、どうして?」

「……芋子と過ごしてる方がいい」

「……」

そんなことを言われると嬉しいのに困ってしまう。
だって御堂くんは陸上部でも輝いていたから。
私と過ごすためだなんておこがましい。

黙っているとふいに顔を覗き込まれ、ドキリとした。
御堂くんの綺麗な顔が近い。
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