俺様男子はお気に入りを離さない
「御堂くんがすぐに駆けつけてくれてね、お姫様抱っこよ、お姫様抱っこ! マジ王子だったわ!」

菜穂が興奮気味に伝えてくる内容がとてもじゃないけれど想像できなくて、私は目をぱちくりとさせた。

だって、倒れた私を御堂くんがお姫様抱っこで保健室に運んだってことよね?
そんなのありえなくない?
ていうか、それが本当だったら私、注目の的じゃないの?

興奮する菜穂とは対照的に私の顔は青ざめる。

「あとでお礼言っておきなさいね」

「いや、それはそうだけど、ど、どんな感じだった?」

「どんな感じって……うーん」

菜穂は思い出すように顎に手をやり、何でもないように言う。

「千花子が倒れてハンドボールの子たちとか先生とかが集まってきたんだけど、保健室へ運ぶってなったときに御堂くんが颯爽と現れてひょいって運んでくれたかな。御堂くんファンの悲鳴のような叫び声があちこちから湧き上がって失礼ながら面白かったわね」

「ううっ……」

「とにかくさ、ケガが大したことなくてよかったじゃないの」

「そうだけど……」

自分の体のことは大したことなくてよかったと思う。
でも問題はそこではないのだ。
御堂くんに運ばれたのが私だとバレていたら、親衛隊とか取り巻きから目を付けられるかもしれないじゃないの。
考えただけで恐ろしい。
深いため息をつくと同時にチャイムの鳴る音が耳に届く。

「私、先生に報告して帰る準備してくる。千花子の荷物取ってくるからさ、もう少しここで休んでなよ」

「うん、ありがとう」

パタパタと小気味よい音を立てながら菜穂は教室に戻っていった。

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