俺様男子はお気に入りを離さない
期末テストが終わると怒濤のように夏休みがやってきた。たんまりと宿題も出ていて、考えるだけで頭が痛い。高校二年生ともなると受験に向けて夏季講習に通う生徒もいるようだ。
私はクーラーのついた自宅でゴロゴロとしているだけだけど。
両親は共働きで昼間は家に一人だ。一応宿題には手を付けるけれどまったく捗らない。しんとした自宅は美術室を連想させた。
ああ、ここが学校だったら、前触れもなく御堂くんがやってくるのに。わからないところとか間違っているところを目ざとく見つけて「芋子、聞いてんのか」って笑いながら教えてくれるのに。
そんなことを考える自分がいて、フルフルと首を横に振る。まったく、どれだけ御堂くんに依存しているのだろう。ちょっとは落ち着け、私。
今ごろ御堂くんは何をしているんだろう。
……って、私ったらまた御堂くんのこと考えてる。
――そういうとこが可愛いっつってんだろ
急に思い出してカアッと顔が熱くなった。
私は慌てて両手で頬を覆う。
「花火大会、浴衣着たら可愛いって言ってくれるかな?」
想像すると胸がドキンドキンと騒ぎ出す。
何を期待しているのだろう。
御堂くんの優しさに溺れそうになっている自分がいる。
いいのだろうか。
御堂くんは皆のものなのに。
瞬間、胸がざわりと揺らめいた。
自分の気持ちに焦る。
皆の御堂くんなのに、わかってるのに、それを嫌だと思うなんて――。