俺様男子はお気に入りを離さない

ぐっと顎を掴まれ御堂くんの方を向かされる。

「――しろよ」

「え?」

「独り占めしろよ。俺は皆のものじゃねぇ。お前のものだ。お前も俺のものだけどな」

「え、ど、どういうこと?」

「この鈍感。お前のことが好きだからに決まってるだろ」

「す、き?」

「ああ、好きだ。足りないなら何度でも言ってやるよ。俺は千花子が好きだ」

嘘だ。
嘘だ。
御堂くんが私のことを好きだなんて、嘘だ。

そう思うのに、なぜか胸の奥の方がじわじわと満たされていく感覚。

「ほんと、に……?」

「好きでもない女にキスなんてするかよ」

まるで初めてのキスの答え合わせをするかのように、優しく触れる唇。
今まででいちばん優しいキス。
あったかくて柔らかくて、とんでもなく甘くて。

「バカ。泣いてんじゃねーよ」

頬を伝う涙は御堂くんの大きな胸の中に捉えられた。
言葉とは裏腹に優しく抱きしめられる。

「絶対離さねーからな」

そんな口調なのに抱きしめる腕はとても優しく私を包み込む。
たくさんたくさん悩んで引っ掻き回されたぐちゃぐちゃの感情が、一瞬で吹き飛んでいってしまったようだった。
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