意地悪王子には騙されない。
第一話
○学校・教室


まだ、授業が始まる前の少し賑わっている教室内。

今日の話題は、『イケメン御曹司が転校してくる』の、一点張りだった。


そして、担任と共に一緒に入ってきた青年。

驚くほど整った顔に、優しい髪色。

背はモデルのように高くて、制服もキリッと着こなしていた。

クラスメイト達は、みんなきゃー!と騒いでいる。

真優(い、嫌な予感がする……)

真優の隣の席はちょうど空席だったのだ。

李音「えーっと、転校してきました綾瀬李音です。」


にっこり王子様スマイルを浮かべた李音は、愛おしそうに真優を見つめて口を開けた。


莉央「ちなみに、あそこにいる可愛いま〜ちゃんは、将来の俺のお嫁さんなんで、よろしく」

真優「……へっ?」


真優は間抜けな声を出して、ポカンとしながら口をパクパクさせていた。

そして李音は何にもお構いなしに真優の隣の席へと座って行った。


李音「久しぶり、ま〜ちゃん。再会のぎゅー、する?」


バッと手を広げた顔のいい王子が恐ろしくて、真優はできるだけ席を遠ざける。


李音「え、ま〜ちゃんどうして避けるの??

真優「あ、あなた誰ですか……!?私、知らないです!」

李音「……え?」


今度は李音がポカンとする。

綾瀬グループ、超有名な大手企業だった。

普通、誰でも知っているぐらいの。

なのに知らない真優に驚きながらも、それ以前にショックを受けた李音だった。


李音「ま〜ちゃん聞いてない、お母さんから」

真優「えっ?」
  (な、なんのこと……!?)

李音「僕たち、今日から——」

蒼人「真優、困ってるんだけど」

真優「あ、あおくん……!」


間に入った蒼人。

この立花蒼人もまた、学園で人気のモテ男子だった。

そして、小学生から仲良しな真優の良き友達、でもあった。

で、実は真優の今現在好きな人だった。


李音「立花くん、申し訳ないけど僕とまーちゃんには事情があるんだ。入ってこないでもらえるかい?」

蒼人「でも真優、困った顔してるだろ?」

李音「その困った顔もまとめて俺んだから、見ないでって言ってるんだけど?」

真優(い、一体この人さっきから何言ってるの……!?)


蒼人をギロッと睨みつける李音。


真優「あ、あおくん、庇ってくれてありがとう……!でも私は大丈夫だから、ね?」


不満な表情をしながらも、すぐそばの席に戻った蒼人。
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