小鳥たちの庭園
小鳥たちの庭園


ドクン、どくん、と。心臓が大きな音を立てる。指先がわずかに震えた。指先あと数センチの距離にあるインターフォン。

 先ほどから指を近づけては離し、自分を鼓舞しては近づけてを繰り返している。傍から見たらただの変人。けれど、どうしたってその一歩踏み出す勇気が出ないでいた。

 一戸建ての白い家は周囲に並ぶ家と比べても立派な様相をしていた。植木で囲まれた庭を門の隙間からちらりと覗くと、芝生と花の自然にあふれた空間が広がっている。

 ベンチやテーブルが置かれていることからあそこでバーベキューをしたり、休日の日光浴を楽しんだりできるのだろうな、とかどうでもいいことに気がそれていく。そのバーベキューのイメージ像に登場するのは6人の高校生。

 途端に先日千条に言われたことを思い出し、憂鬱が舞い戻ってきた梨帆は大きなため息を落とした。

 高校生6人。そのうち5人が男子生徒。ただでさえ、初めましての人間と話すのが苦手だというのにそんな人たちが住む場所に来るなんてハードルが高すぎる。 

「私には無理です……!」と言いたかったが、それすらも言えない引っ込み思案ぶりだった。弟に見られていたならば、呆れて「アンタのためだろ」と言いながら、今の自分よりも重いため息をこぼされている事だろう。 

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