【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
 カリ……カリ……。

 ドアを擦るような小さな音。

 リュミエールがドアを開けると予想通り、そこにあったのは、銀色の猫――小公爵サムの姿だ。

「ぷふっ……」

 ――小公爵。
 仏頂面のレクシオールの顔が浮かんで、リュミエールはつい、息を吹き出してしまう。

 彼はお行儀よく背筋を伸ばし、ちょこんと座ったまま動かない。

「ようこそ小公爵様、お一人かしら……? どうしたの? 入らないの?」

 リュミエールはその場にしゃがみ、彼の首筋を撫でてやる。
 人ではなく猫でも、こうして訪ねて来てくれたのは嬉しい。

「ニャン……」

 だが彼はドアの隙間を開けても室内に入る気配はなく……やがて少し遠ざかったところで立ち止まると、振り返って小さく鳴いた。

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