【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
 そんな彼女を見て、レクシオールは何か彼女が元気になるような知らせはないかと考え、いずれ伝えようと思っていた事実を一つ思い出す。

「そうだ……リュミエール、お前に一つ教えてやらねばならないことがあったんだ。俺はレグリオという名前を知っている……そう、それはこの家の初代当主の父の名前だったんだ。外の者には秘密にされているがな」
「……! そんなことになっていたのですね……。……あの時、本当のことを教えて下さらなかった理由を教えていただけますか?」

 出会った時、彼は辛そうな顔をしてレグリオを知らないと言ったが、今ならば……。
 リュミエールはレクシオールの顔をまっすぐに見つめた。

 すると彼は、自嘲するような表情で笑う。

「すまない。あの時俺には、この家を誇りに思う気持ちよりも……母との(いさか)いの原因になったこの身分を(いと)っていた。小さなころからずっと、肖像画の中の彼の生き写しだと言われ……この人のように立派な人間になれとそう言われる度に反発していた……こちらへ来てくれ」

 執務室の奥にある小部屋に二人は招かれ、リュミエールは大きく目を開く。
 壁の真ん中に飾られた古い一つの絵には、まさしくレクシオールとうり二つの男性が描かれていたのだから。
 
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