水と油の私達
「いや~、困るな~。俺のお姫様に手を出されたら」



ゆるい、でも少し低い声に私はハッとする。

目の前にいたのは合瀬君だった。



「おおせ、くん?」



震える声でそう呟く。

と、次の瞬間、男の人は大きな音をたてて倒れた。

合瀬君が蹴りをいれたらしい。

合瀬君はそのまま私のほうに振り向くと、手を差しのべてきた。

捕まれってこと?

意味が分からずただ立ちすくむ私の手を合瀬君はひいて立ち上がらせた。



「あ、ありがとう」

「いいよ、大丈夫?」



手を差しのべる合瀬君に、体がビクリと震える。

そんな私は合瀬君のことをまともに見れなかった。

さっきのこともあったけれど、幸都と初めて逢ったときも、あんなふうに幸都が手を差しのべてくれたから。

幸都と合瀬君が重なってしまい、私は恐ろしさを感じる。
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