「君と一緒!」〜人形の彼と同棲したら〜
「あなた、よく卵を上手に焼けたね。誰に習ったの??」

「ご主人様が教えてくれたんだ。僕は人形で味見ができないから、料理を手伝うならうまく火だけは通しなさい、って!」

 私は焼いてくれた目玉焼きに塩コショウを振り、サラダにドレッシングをかけてパンと食べながら、彼の話を聞いていた。

(う〜ん…彼、こうしてみると人形らしくない。だからって人間とも違うし…。しかも人間の手伝い用として作られたわけじゃないみたい…。それにどうして動けるんだろう?何のために作られたんだろう…?)

 私が考えていると、彼は目を輝かせながら尋ねる。

「ミオ、今日は何をするの?」

「…あ。今日は学校は休みだしバイトもないけど、買い物に行くから」

 すると彼はニコニコと笑いながら言う。

「僕も行きたいよ!ミオがいつも何してるか知りたい!」

「え、大丈夫かな…あなたを連れて…」

 そう言ったところで、私は彼を呼ぶ名前がないことに気付く。
 しばらくの居候、とはいえ呼び名がないのはだいぶ不便だろう。

 私はさんざん悩んだ末に彼を『イチ』と呼ぶことにした。
 私の頭にパッと思い浮かんだ名前だ。

(あぁ…ネーミングセンスが…)

「イチ?嬉しいよミオ!ありがと!」

 名前を教えられた彼は喜んでくれたようだ。

 そして嬉しそうにしながら私の手を引く。

「さ、行こうよ!」

「ま、待って!いまあなたは普通の服を着ているからいいかもしれないけど、私は着替えてすらいないんだから!」


 支度を済ませ、結局イチを連れて外に出かけることになった。

(ま、イチ一人を家においといて、何かあったら困るもんね…)
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