夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
第十章『愛しています』
◇◇◇◇

 ランスロットが苦しそうに暑い息を吐きながら、目を閉じている。
 セバスの息子ガイルによって、関係者にはランスロットのことが伝えられた。
 それを聞きつけて、ハーデン家の屋敷に来たのは諜報隊のブラムと魔導士団長のレイモンであった。
「陛下のことだから、来たがっていたんですけど。あの人が来たら来たで大変なことになるんで。護衛の数を増やして、置いてきました。オレもすぐここに戻ってくるとは思いませんでしたけどね」
 ブラムは、眠っているランスロットの顔を見つめ、日頃の恨みを込めるかのように眉間をぐりぐりと人差し指で押していた。
「団長、起きてくださいよ」
「やめろ、ブラム」
 その手をペシっと叩いたのはレイモンだ。
「お前たちの不手際だろう? すぐにあの武器を確認したのか?」
「団長のことを聞いてから、確認しました」
「遅いわ」
「あの、何かあったのでしょうか?」
 シャーリーは二人の話を少し離れた場所で聞いていた。彼女の側には、イルメラが寄り添っている。
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