夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
「では、我々はこれで戻る。シャーリー殿には、明日、少し話を伺いたいのだが」
 レイモンの視線の先にはイルメラがいた。
「私が奥様には付き添いますので」
「ご協力、感謝する」
 ビシっと頭を下げたレイモンは、まだランスロットをつついたり撫でたりしているブラムを引きずるようにして連れていく。そんな彼らを見送るのはセバスの役目だ。
「奥様、お腹は空いておりませんか?」
 イルメラから声をかけられてしまうと、急にお腹が空いてきた。
「そうね」
「お部屋に運びます」
「ありがとう」
「どうか、旦那様をお願いいたします」
「あなたにも、迷惑をかけたわね」
「いいえ。ここにいてくださって、こうやって旦那様に寄り添ってくださって、感謝しております」
 イルメラが食事の準備をするために部屋を出ていった。
 シャーリーはランスロットが眠っている寝台へと近づき、彼の顔を覗き込む。
「ランス……」
 熱にうなされているためか、頬が少し赤い。セバスが用意していたタオルで、額の汗を拭う。
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