夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
「ええ。そうみたい。二年分の記憶が無くて。驚いたことに、ハーデン団長と結婚していたの」
「そうね。だけど、その結婚式には私も参列したから、それは間違いなく本当の話よ」
 アンナはシャーリーの前にカップを置いた。シャーリーは驚いて目を開き、アンナの顔を見た。
「もう、本当に覚えていないの? 嬉しそうに団長と付き合うことになったって、私に報告したことも?」
 シャーリーは小刻みに首を横に振る。
「そう……。別にあなたが嘘をついているって思っていたわけではないけれど。そうであったらよかったなって思っているのかもしれない……」
 アンナの複雑な気持ちが伝わってくる。どことなく睫毛が震えていた。
「ごめん、なさい」
 シャーリーの口からは、思わずその言葉が漏れていた。記憶を失ったことでたくさんの人に迷惑をかけている。そしてこれから、アンナにも迷惑をかける。
「ううん。シャーリーに謝ってほしいわけじゃないの。ただ……。こっちこそごめん。記憶を失って不安なのはシャーリーの方よね。記憶が戻るように、私も協力するから。ね」
 シャーリーはただ頷くことしかできなかった。
「じゃ、シャーリー。早速だけど、簡単なテストをさせて。二年分の記憶を失っているとなると、事務官として仕事をこなすことができるかどうかを確認する必要がある。ここの責任者としてね」
「わかった」
 シャーリーは、力強く頷いた。
< 96 / 216 >

この作品をシェア

pagetop