オフクロサマ
拘束
「裕貴、裕貴!」


聞き慣れた声がして意識が浮上していく。


真っ暗な闇からどうにか明るい場所を目出して足を進めると、急激に体の痛みが蘇ってきた。


「いってぇ……」


意識が戻ると同時に身をよじるような痛みに顔をしかめる裕貴。


「裕貴、よかった、気がついて!」


声に視線だけを向けるとそこには涙目になった智香がいた。


さっきまでロープで拘束されていた記憶があるけれど、今は自由になっているみたいだ。


「智香、大丈夫か?」


どうにか声を絞り出す。


男性は本気で殴りつけてきたようで、腹部の痛みは少しも和らいではいない。


「私は大丈夫。裕貴殴られたんでしょう?」


「あぁ……少しだけ」


そう答えてどうにか体を起こして周囲を見回すと、そこが自分たちが使用していた公会堂であることがわかった。


電気はついておらず、自分たちの荷物もなくなっている。


「荷物は?」


聞くと智香は悲しげな表情で左右に首を振った。


村人たちに持っていかれてしまったのだろう。


大田に貸してもらっていた布団もなくなっている。


「スマホも食べ物もなにもないの」

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