Triangle Love 7 ~ 揺れる心は夏の蝶 ~
館内のアナウンスによると、20分後にイルカショーが開始されるらしい。

その情報を聞いたあたし達は、ショーが行われる会場に移動した。

既に席は8割ほど埋まっていて、特に前方の席はほとんど空いていなかった。

会場は水族館内ではあるけど、外にある。

季節は真冬なのに、寒さなんか関係なく、この盛況ぶり。

さすが人気者のイルカだ。

あたし達は後方の席に座った。

隣にいるツクシくんは、もう楽しそうだ。

『ミツバちゃん!イルカだよ!』

『わかってるよ!イルカは何番目に好きなの?』

『うーんと、3番目。』

『いいじゃん!』

『ミツバちゃんは?』

『あたしは…。5位くらい?分かんない。』

『ご来場の皆様。大変お待たせ致しました。』

しばらく雑談をしていると、イルカショー開始のアナウンスが流れた。

それを聞いたあたし達は、黙った。

ふと、左手に温もりを感じた。

ツクシくんがあたしの手を握ったようだ。

『…。』

『…。』

待ちに待った、イルカショーが始まった。

イルカ達の鮮やかな連続技に、会場は大いに盛り上がった。

当然、あたし達も楽しんでいた。

イルカがその日最大のジャンプを決めた。

その瞬間のこと。

『…!』

視界に映っていたはずのイルカが、一瞬であたしの前から消えた。

ツクシくんがあたしにキスをしたから。

みんながイルカに夢中になっている隙に。

そうだ、この子はこういう子だった。

忘れていた。

忘れていたってことに気づいた時、少しだけ寂しくなった。

でも、照れくさそうに笑うツクシくんと、会場の歓声を聞いて、すぐに楽しい気持ちになった。
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