魔女の瞳Ⅳ
第三章

夢?

それは、妙に生々しい夢だった。

薄暗い、蝋燭の灯りだけが頼りの部屋。

湿気の強い、石を組んで作られたその部屋は、地下室のようにも思える。

…その部屋に、二人の人物。

一人は男だった。

今度は見間違える筈もない。

マシュー・ホプキンス。

忌まわしき異端審問官。

彼は片手に乗馬用の鞭を握り、ゆっくりと、しかし追い立てるように女を追っていた。

…その女。

衣服を剥ぎ取られ、一糸纏わぬ姿のまま、足を引きずるように部屋の中を歩く。

表情は疲労困憊。

もう何時間…いや、何日間歩き続けているのだろうか。

部屋の中を、ぐるぐると単調な行軍。

裸足の足跡は赤黒い血にまみれる。

だが歩みを止めようものなら。

「止まるな」

唸りを上げて。

ホプキンスの鞭が女の白い背中を打った。

「ひぎぃっ!」

女が悲鳴を上げる。

一度や二度ではない。

既に女…天羽家長女、蘭花の背中には、数え切れないほどの鞭による裂傷が刻まれていた。


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