しぃぴぃ~彼は年上のCPが好き?~
耳を塞ぎたくなる心境なのに、おばちゃんの声は、おかまいなく聞こえてくる。

「加村くんが待ち受けにしてるのって、アリア……。えーと、名字は何だったかしらね。とにかく、『アリア』って言う、スポーツ選手だって!」

(え……?)

「ホ、ホントですか!?あれは、ただの有名人?」

「そうよぉ!店長もそれくらい知っとけば良いのにねぇ?」

「スポーツニュースとか見ないのかしらねぇ?」と、口にしながら、おばちゃんはスタッフルームを後にした。

「あっ、私も休憩時間終わる。メイク直さなきゃ。」

そう言って、一緒に話に入っていた女の子も、メイクルームへと消えていった。

「……………。」

いつの間にか、店長もいなくなっており、部屋にはあたしと加村さんだけになっていた。


(加村さん、テニス好きなんだ。アリアなんたらのこと話したら、会話に乗ってくれるかな?)

加村さんは、ロッカーに向かい、自分のスマートフォンのディスプレイを少しだけ見、バックの中に入れようとしていた。

「ホントに、好きなんですねぇ。『アリアさん』って人。」

「え!?」

加村さんは、「何で知ってるの?」と言いたそうな、かぁっと顔を赤らめてしまいそうな、そんな微妙な表情をした。

「…………。」

お互いの間に、一瞬の沈黙が流れる。

「…………。」

(何か、照れてる?スポーツ選手が好きなことバレただけで?)

「ふはっ。」

あたしは、笑った。

(いつものポーカーフェイスが崩れてる。意外に、可愛いトコあるなぁ。年上なのに……。)

「さっき、携帯の待ち受け店長に見られてたでしょ?だから、そうなんだなぁと思って。」

「あ、あぁ!そうか。」

加村さんがホッとした顔をする。

(……?何?)

「俺、別に、この選手のこと好きじゃないよ?」

「え……?」

「似てるんだ、俺の……。あー……。知り合いに。」

(……!?どういうこと?)

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