「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「夕食を食べた後にとか、寝る前なのにとか、罪悪感を抱いてしまうわよね。今日一日がんばったささやかなご褒美って思えば、すこしだけお腹に入ってもまったく問題ないわよね」

 侯爵夫人は、お話や小説に出てくる悪魔や魔王のように誘惑する。

「いいじゃない。いま食べた分は、明日敷地内を散歩して消費すればいいんだし」

 そして、エルマも悪魔のささやきでわたしを悪い道にひきずりこむ。

 結局、食べてしまった。

 三種類とも。均等に味あわないと、ボルディーガ侯爵家のパティシエに申し訳が立たないから。

 甘さ控えめで美味しすぎる。

 気がついたら、カモミールティーを三杯おかわりしていた。

 クッキーは……。三巡目から数えるのをやめてしまった。

 そして、客間でぐっすり眠った。

 翌日は、散歩がてら敷地内を案内してもらった。

 そうして、はじめてのお泊まり会が終った。

 近いうちにかならず泊りに来ることを侯爵夫妻に約束し、ボルディーガ侯爵家をあとにした。
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