「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「なあに、このことも心配はない。出来うるかぎりの援助はする。ナオ、きみのせいじゃない。と言っても、なかなか割り切れるものではないな」

 いつの間にか、全員の食事の手が止まっている。

「ナオ、気に病まないでと言っても難しいわよね。何もいますぐに答えを出す必要はないわ。アロイージ王国の多くの人たちの為に、もう一度聖女の力を使う手もある。それを心に留めておくといいわ」
「侯爵夫人……」

 たしかにその通りだわ。

 気に病むくらいなら、再度聖女の力を有効にして祖国に加護をあたえれる手段もある。

 少しだけ気がラクになった。

 とりあえず、いまは目の前の問題に向き合わなければならない。

「すまなかった。こんなときに伝えるべきではなかったね」
「いえ、侯爵。教えていただいてよかったです。ありがとうございました」

 それから、また食事を再開した。
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