「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「あなたの歓迎会なんだから、当然あなたが主役でしょ?だけど、ぜったいにデボラが目立つわよ。最初に、宰相があなたのことを「パートナーのいない隣国の聖女」って紹介するの。それから、長ったらしいどうでもいいような話をして、『娘の婚約者であるジルド皇子が、ドラーギ国より無事帰還しました。じつにめでたい。それから、本日は娘の誕生日なのです。どうか祝ってやってください』、なーんてことを抜け抜けと言うのよ」

 彼女は、威厳のある男性の話し方をした。
 きっと、宰相の物真似ね。

「残念だわ。宰相にまだ会ったことがないのよ」

 残念ながら、会ったことのない宰相の物真似をされても思いっきり笑えないわ。

「そうだったわね。自分では似ているって思うのよ。お兄様なんて、同性だからもっと上手よ」

 エルマは、兄の方がずっと物真似が上手だと自慢した。

 なんだか微妙だわ。正直、どう反応していいかわからない。

「きっとそうなんでしょうね」

 だから、当たり障りなく言っておいた。

 こんなふうにときをすごし、いよいよ当日を迎えた。
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