「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
 視界に入るだけでも、素敵な衣装に身を包んでいるカップルばかり。

 緊張が嫌でも増してくる。

 エルマの推測では、わたしの紹介は一瞬のこと。いいえ。紹介してくれるかどうかも微妙な状態らしい。

 もしも紹介されたとしたら、たとえ一瞬でもこれだけの人に注目されることになる。

 もしかして、一言二言でも挨拶しなきゃならないの?挨拶の文言をかんがえておかないといけなかった?

 侯爵といっしょにあるきながら、焦りはじめた。

「ナオ、ナオ」

 そのとき、エルマがうしろから呼びかけてきた。

「見てよ。攻略しないといけない料理やスイーツがたくさんあるわよ」

 彼女に左耳にささやかれ、緊張や焦りが軽減された。
< 133 / 175 >

この作品をシェア

pagetop