「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「ほう。パートナーがおらず、ボルディーガ侯爵がエルコートしているようですな。そちらのレディは、隣国からやって来た聖女です。どうやら陛下がアロイージ王国から拾ってきたのか、あるいは押し付けられたかされたようです」

 宰相は、おざなりにわたしを指さした。

 周囲の人たちには注目されたけど、周囲以外の人たちにわたしがが見えるわけもない。

 正直、ホッとした。

「娘の婚約者であるジルド皇子が、ドラーギ国より無事帰還しました。じつにめでたい。それから、本日は娘の誕生日なのです。どうか祝ってやってください」

 宰相は、そう続けた。

 エルマ。あなたって、もしかして聖女だったのね。しかも、大聖女よ。

 彼女、先を見通す力があるのよ。

 こっそりうしろを見ると、エルマが美貌にニンマリと笑みを浮かべている。

「ジルド皇子」

 宰相が手招きをすると、青年がデボラの腕をエスコートしつつ現れた。
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