「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
 そんな彼女にどう対応したらいいのかかんがえているところに、エルマがにっこり笑いかけた。

 ちょっかいを出してきた彼女に、ではなくわたしに。

「きいた、ナオ?あなた、『押しかけ聖女』って言われているわよ」
「ええ、きいたわ。エルマ、あなたは『馬きちがい令嬢』ね」
「じゃあ、言ったご本人はなんなのかしらね?」

 彼女はおどけたように言うと、豪快に笑った。

 その笑いに誘われ、わたしも笑ってしまった。

 周囲にいる貴族子息や令嬢カップルたちも、わからないように笑っている。

「なんですって?あいかわらず口の減らない女ね?エルマ、あなたは誰もが知っている馬きちがいじゃない。それから、彼女は……」

 デボラはフンと鼻を鳴らしつつ、わたしを指さした。
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