「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「ナオ―ッ」

 彼女は、寝室に入って来るなりわたしに抱きついてきた。

「昨夜はカッコよかったわよね。まさか、陛下が公であんな暴挙、ってこれはいい表現じゃないわね。大胆なこと、かしら?とにかく、あなたにプロ―ポーズまがいのことをするなんて。神様もビックリだったわよね」
「はい?プロポーズ?」

 わたしったらまだ寝惚けている?
 彼女の言った意味が理解出来ない。

「そうよ。レディに対して不愛想で不機嫌で無遠慮な彼がよ。ほんと、素敵だったわ」

 ああ、フランコの体裁上の言動のことね。

 エルマの言っていることが、やっと理解出来た。

「ああ。あれは、わたしに気を遣って。それと、体裁を整える為……」
「ナオ。あなた、まさか気がついていなかったの?」
 
 彼女はわたしをいったん開放し、ジッと見つめてきた。
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