「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「陛下は?」
「お待ちです」

 カストの問いに答えた衛兵も、もう一人の衛兵もすっごく大きい。

 どちらも腰に大剣を帯びている。

「顔っ!」

 カストが唐突に怒鳴ったので、驚いて体がビクリとしてしまった。

「公爵令嬢、怒鳴ったりして失礼いたしました。公爵令嬢、向かって右側のウベルト・ディーニにはくれぐれもお気をつけ下さい」

 カストは、向かって右側にいる髭面の衛兵を指さした。

「どうしようもない女好きなのです。ですが、何か欲しいときや飲み食いしたいようなときには、遠慮なく甘えて下さい。いくらでもおごってくれますよ」
「閣下、やめて下さい。美しいご令嬢のわたしに対する心象が悪くなってしまいます」
「ふんっ!すでに髭面でバカでっかいってところで、ご令嬢はビビっていらっしゃる」
「だまれ、トーニオ。おまえもでかいだろうが」

 大きな二人が口喧嘩をはじめた。

 思わず、ふきだしてしまった。
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