「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
 ルーポの機嫌は、思った以上どころか想像を絶するほどいい。

 とても美しいわ。

 二頭とも惚れ惚れするほど美しい。

 人を乗せず、草原を駆けている二頭を想像してみた。

 その荘厳すぎる光景にゾクゾクしてしまう。

「美しいな」

 すぐうしろからフランコの声がきこえてきた。

「はい。ちょうど二頭の馬の美しさに魅了されていたところです。ルーナ……。月の光そのものの毛色ですね」
「ありがとう。だけど、気性は荒くてね。戦場でまったく物怖じしないし、他の馬を寄せつけようとしない。人間(ひと)は、おれとガリレオしか受けつけないんだ」
「ルーナが?そうなんですか」

 そんな感じには思えないけれど。驚きである。

 驚きではあるけれど、彼女は強いのねとも思う。その強さがうらやましい気もする。

「ルーポとあんなふうに駆けているなんて、ガリレオと驚いていたところだ。ああ、ルーポの名の由来はきいているよ」

 フランコはわたしの隣に来ると、おなじように柵に両肘をのせた。
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