無茶は承知で、今夜あなたに突撃します
 結婚を意識する年齢は男女で違いがあると思う。
 社会人としての経済的安定などを考慮すると、晩婚化している現状もうなずける。
 生涯未婚でいいという考えの人もいる世の中で、私たちの地元では親が勧めるのもあって、実は比較的若い年齢で結婚する人間が多いのだ。

「でも、美季(みき)ちゃんは? 将来は結婚を考えてるとか?」

「ないない! ていうか……美季とはそういうんじゃないから」

 迷わずそう答えた太一がハンバーグと白米を交互に口に放り込んでいる。
 私は今の会話に違和感を覚え、反対に箸が止まった。
 半年くらい前に知り合った美季ちゃんという女の子と仲良くしていると太一から聞いていたので、てっきり順調に付き合っているのだと思いこんでいたけれど、違うのだろうか。

「美季ちゃんは、太一の彼女でしょ?」

「うーん……どうかな。なんていうか、ただ一緒に遊んでるだけって感じ」

「太一、最低だね」

 口を尖らせながら思いきり冷たい声音で言い放てば、太一はそれに動揺したのかゴホゴホとむせ返った。
 グラスの水に手を伸ばし、咀嚼していた口の中のものをすべて飲みこんでから、彼はあらためて私と視線を合わせる。

「違うって。軽蔑はやめてくれ。俺が一方的にもてあそんでるとかじゃなくて、美季だって俺のことは遊びなんだよ」

「本気じゃないのは、お互いになの?」

「そうそう」

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