散りゆく桜に願い事   うちのおらん世界で

初恋は桜のような才色兼備

初恋やった。

才色兼備って言葉はあの子から学んだ。

皆が薔薇のようだと言うあの子は俺は桜のような人やと思う。

肌が真っ白でスラッとした手足がスタイルの良さを物語ってる。

長い黒髪は控えめに後ろで束ねていて飾りっ気はない。

目は真ん丸大きくて鼻や口の主張はない。

人形のようで造形美が素晴らしい。

もちろんモテる。

年上の大人彼氏がおる噂もあるし、親が決めた婚約者がおるっていう噂もある。

あの子が誰にでもなびかないのが噂を加速させる理由であると思う。

あの子が薔薇と言われる理由は容姿もさることながら、中身の問題である。

あの子は少なくとも俺が知る限り友達はおらん。

クラスは別やけどいつ見ても一人やし、俺は声を聞いたことすらない。

あの子と同じクラスのチームメイトの話では話しかけても無視でいつも周りを見下してるやな奴。

そんなわけないやろって否定するが、強く出れるほどあの子を知ってるわけちゃうから結局何も言えんかった。

俺はあの子を横顔しか見たことない。

だからなんやろか、あの子の横顔は寂しそうで儚げでなんか危ない感じ。

ほっとけない。

俺が守りたいって思った。

アホらしいと思うと同時に俺のようなガキが相手にされることはないという諦めもある。

それでも俺を見てほしい。

そんな気持ちが通じたんかもしれん。
< 4 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop