若旦那様の憂鬱
授業が終わり、正門近くで柊君が来るのを待つ。

「一橋さん。帰るところ?」
声をかけられて振り返ると、同じクラスの伊藤君だった。

「お疲れ様。うん、迎えを待ってるの。」

「そうなんだ。普段はバスでしょ?
良かったら今度、家まで乗せて行こうか?」

「あっ、大丈夫だよ。」
曖昧に断る。
伊藤君とはそこまでの仲じゃ無いし、
車の中で2人はちょっと気まずい。

「一橋さんって彼氏いるの?」
急に聞かれて返答に困るけど、

「うん。…一応いるよ…。」
と、曖昧な返事をしておく。

「…そうなんだ。もしかして同級?同じクラス?」
いろいろ聞いてくる。
こんなお喋りな人だったんだとちょっとびっくりする。

「えっと…社会人なの。」
それ以上は話ないようにしなくちゃと警戒する。

「そうなんだ…知らなかったな。」
そう言って伊藤君は、元気無く帰って行った。

その後、10分くらいで柊君の車が到着する。

< 117 / 336 >

この作品をシェア

pagetop