若旦那様の憂鬱
親父の代わりに午後から商工会の集まりに出席する事になった。

花の学校は何時に終わるんだろう?

ふとそう思うといても立ってもいられなくて、メールして聞いてみる。

昼休みの時間帯のせいか直ぐに既読になるが、返信がなかなか来ない。

多分、花の事だから遠慮してると思い電話をかけてみる。
4時頃に終わると言うから、必ず迎えに行くと決め電話を切る。

いささか強引過ぎるが、
花は遠慮し過ぎるからこのぐらいが丁度良い。
花に会いたい気持ちは強い。

心が通じ合ったせいかそれは前にも増して加速度をつける。

商工会の集まりは、3月の役割分担の振り分けで、なかなか予定通り終わらず時間が気になって仕方がない。

「一橋さん、良かったら今度の商店街の催し物に参加してくれませんか?」
そう商店街の会長が名指しで話しかけてくる。

「僕がですか?何の催し物ですか?」

「町おこしイベントの司会なんだけど、
今年はミス温泉美人コンテストをやるんだ。
君みたいな見目の良い人が司会をやった方が絶対に人が集まると思うんだよね。」

こういうボランティア的な依頼がたまに来るが、大体が土日だったりするので、
隔週で週末休みをもらっている俺からしたら、プライベートを削る事になる。

ただ、一橋を名乗る手前なかなか断る事も出来ないのだが…。

「分かりました。
仕事の絡みもあるので即答は出来ませんが、調整してみます。」

この会議が早く終わるのならばとほぼ了承の返事をする。

出来れば目立つ事はしたく無いが、
親父に話を振れるだろうか……。

そんな事を考えているとやっと会議が終わった。

「では、これで失礼します。」
足早に会議室を後にする。
今4時だから、急げば10分くらいで花の大学に行けるはず。

雪も降り積もり始めている。
花は暖かい所で待っていてくれると良いが…
そう思い電話をしたが出ない。

仕方ない、急ぐしかない。
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