若旦那様の憂鬱
その後、柊生は宣言通りバイトまで花を送ってくれて、終わった頃にまた迎えに来てくれた。

柊生の心配症が今までよりも倍増しそうで、ちょっと心配だけど…。

花はそう思いながらベッドに入る。

自分が話した事で、柊生の心に傷を作ってしまっていないだろうか…と、それが1番心配で…。

ちゃんと眠れてるかなぁ、とベッドの中で悶々と考えてしまう。

ふと、スマホを見ると12時を回っている。メールだけでも入れてみようかと迷うけど、

もし、寝ていたら起こしてしまうかも…。
と、躊躇する。

そう思いながら、しばらくスマホを眺めていると、
突然スマホが震えて着信音が鳴る。

びっくりして飛び起き、着信をタップする。

『花、寝てたか…?』

「ううん。まだ…ちょっと寝れなくて…。
柊君は?明日仕事7時からでしょ。早く寝なくちゃ。」

『俺もなかなか寝れなくて…。
花の声を聞けば寝れるかもと思って電話した。』

素直にそう言う、柊生が可愛いと花は思って思わず笑ってしまう。

「じゃあ、絵本でも読んであげようか?」
冗談でそう言うのに…『いいね…。聞きたい昔話し。』思いがけず、のって来るから困ってしまう…。
「えっ…昔話?あんまり知らないよ…。」

『花が知ってる話しでいい。』

「じゃあ…お婆ちゃんが教えてくれた昔話しでいい?」

『ああ、面白そうだな。』

花は、仕方が無いから、誰もが知ってるだろうわらしべ長者の話をする。

貧しい男が、ワラから物々交換をして最後には家と屋敷を手に入れ幸せに暮らすという。
昔話し。

柊生に話して聞かせていると、相槌を打っていた声がだんだん聞こえなくなって…物語の最後にたどり着く前に、呼びかけても応答しなくなった。

花はホッとして
 
「おやすみ。」
と言って、通話終了をタップする。

柊生が寝てくれた事にホッとして、花も直ぐに眠りに着く。
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