若旦那様の憂鬱
食事を終えて、2人ソファで寛ぎながらTVを観る。
広いソファなのに、柊生との距離が妙に近くて、花はやたら緊張してしまう。

柊生が入れてくれたお茶を飲みながら花は考える。

柊君の隣は安心もするけどドキドキもする。
この距離にいつか慣れる日が来るのかなぁ?

「明日はバイトか?」

不意に柊生が話しかけてくる。

「えっと、夕方16時から19時だよ。」
スマホのスケジュールを見ながら花は言う。

「火曜はバイトが無いからハンバーグ作りに来てもいい?」

「もちろん。さっきも言ったけど、
ここは既に花の家でもあるんだ。
俺が居なくても気にしないで好きに来てくれればいい。後で、鍵渡すから。」

「あ、ありがとう。」

花はいろいろ頭がついていかなくて思考回路が働かない。

「直ぐにとは言わないけど、いずれは一緒に暮らしたい。
もし、花がこの場所を気に入らないなら、
引越ししたって構わない。」

「き、気に入らないなんて思う訳ないよ。」
慌て花は否定する。

「ただ、いろいろ早くまわり過ぎて、
頭が理解出来てない感じがするの。」

花はありのままの気持ちを素直に話す。

「まぁ、ここ1ヶ月、
目が回る速さでまさか結婚まで出来るとは思わなかったけど、
早かれ遅かれ俺達が結婚するのは必然だったんだよ。」

花と反対に落ち着き払った柊生は、
花の頭を優しく撫ぜる。

「ただ、花はまだ若い。
夢もやりたい事もまだまだこれからだし、
縛り付けるつもりは無い、好きな様にしてくれたらいいよ。
だけど、いつだってどこにいたって花の居場所は俺の隣であって欲しい。」

熱い目で見つめられて、心臓が痛い。

花はこくんと頷く。
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