若旦那様の憂鬱
お昼前にパレードを観るため場所を探す。

既に人混みになっていて、座って見られる場所は無さそうだなと花は諦めモードになりながら柊生の後を着いて歩く。

「花、ここでちょっと待ってて。絶対動くなよ。」
そう言って、花をベンチに座らせどこかに行ってしまった。

今日、初めて1人になったなぁと花はぼんやり思う。
毎日数時間しか会えない日だって平気だったのに、数分離れただけで寂しくなる。

どこ行ったんだろう?
消えていった道を見つめ柊生が早く戻って来ないかと目を凝らす。

「こんにちは。お姉さんイヌ耳すごく似合ってますね。可愛い。」
不意に声をかけられる。

見ると男子2人組。
高校かな?大学生くらいに?
花はぼんやり見つめる。

「マジで可愛い。お友達待ってるの?良かったら一緒回らない?」

馴れ馴れしくベンチの隣にニコニコしながら座ってくる。

こんなにフレンドリーに知らない人に話しかけられた事が無い花は、目が点になって事態をよく把握できないでいる。

「あの…、すいません。人を待ってますので…。」
断り方も分からず困ってしまう。

「じゃあ、僕らも一緒に待つよ。」

両サイドを囲まれるように座られて、さすがに花も怖くなる。

「あの…。」
勇気を出して話しだそうとしたその瞬間、

不意に手を引っ張られ気付くと柊生の腕の中。

「僕の妻に何か用ですか?」

男達を見据えて睨みつける目が鋭く光る。
整った顔は怒ると本気で怖い。

「す、すいませんでした。」
怖気付いた男子2人組は慌ててその場から逃げて行く。

< 301 / 336 >

この作品をシェア

pagetop