彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.1】
 始業時間になると、すぐに彼から電話が入った。

「……森川サン、聞いたよ。絶対渡さないからな」

 思った通りの第一声だった。机の電話だから、聞いている人もいるだろう。語尾が公私混同している。

「取締役、その件ですがまだ決まったわけではありません。私の後任もまだ調整中です」

「……菜摘、お前異動了承したのか?」

 会社の電話なのに名前を呼ぶなんて一体どうしたんだろう。

「取締役おちついてください。携帯で話しましょう」

「誰もいない会議室で話しているから大丈夫だ」

「三橋新部長から伝言です。全て新部長が取締役と交渉するそうです。彼は、私のプライベートには干渉しないと言いました。そういう意味では私に全く興味もないと言ってました。おそらく見破られました」

 声を落として小声でささやく。

「どういうことだ?付き合っていると言ったのか?」

「肯定も、否定もしませんでしたが想像していたようでした。お話して驚きました。すごく頭の切れる方ですね」

「ふざけるな、達也のやつ調子に乗りすぎだ。俺を敵に回す気なのか?」

「落ち着いて下さい。私は公には秘書で、プライベート変わりません。新部長もそれを阻む気は全くありません」
< 20 / 43 >

この作品をシェア

pagetop