彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.1】

昼は秘書

「森川サン、スケジュール何とかなりそう?」

 この微笑みと苗字の呼び方……。何とかなりそう?じゃなくて、何とかしただろうな、と言いたいということが私にはわかる。
 
「はい……とりあえず、氷室専務の秘書の方に連絡しましたら、再来週までにはなんとかなりそうです」

「そう……よろしく頼むよ。うちのスケジュール的には今月中に話を持って行かないと間に合わないだろう」
 
「取締役もお忙しいからしょうがないですけど、相手が悪かったですね。あちらも相当スケジュール詰まってます」
 
「兄貴は嫁さんの秘書に弱いから、彼女経由でなんとかしてよ。頼りにしてるよ、森川サン」
 
「なんか……毎回それでごまかされてる気がします……」

 悔しいから小さいが声に出して言う。するとすっと近寄ってきて耳元でささやく。
 
「来週、約束のイタリアン連れて行ってやるからさ」
 
 振り向くとそこには例の彼の笑顔……。また騙されそうになるが、頭を振って煩悩を押さえる。
 
「もう……。とにかく、スケジュール変更はできないと本部長達には伝えて下さい。そうじゃないと、毎回出来ると思われてるふしがあります」
 
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