俺様弁護士は激愛を貫きとおす

12.オフィスラブとは

「優羽、終わったことなら尚更構わないよな?」
 それは、そうなのだけれど。
 優羽が戸惑っている間に藤井が口を開いた。

「うちの営業部にいた柴崎さんて方が吉野さんに猛アタックしてお付き合いしてたんですよ」
 口を開く藤井を優羽は止めようとしたけれど、城ヶ崎に目で制されてしまった。

 本当に終わったことだし、知られて困ることでもない。優羽は口をつぐむ。
 ただ、良い思い出でもないから思い出したくないだけだ。

「取引先のご令嬢と二股かけてたのが発覚して、吉野さんのこと、ひどいフリ方したんですよ。吉野さんは自分が被害者だったのに、詰ることも責めることもせずに黙っててカッコよかったです」

 だって、何も言うことはない。
 二股に気づいていなかったのも自分だし、おかしいことがあったはずなのにそれにも目を瞑っていたのも自分だ。

 あったことを淡々と藤井が語ってくれるのが、むしろ救いだった。いたたまれなくて目の前のお吸い物に口をつける。

 城ヶ崎がにっこり笑って口を開いた。
「そいつがセックスがド下手な男か」
 ごほごほっ……! ちょ、お吸い物っ……出るかと思った。かろうじて飲み込んだ優羽だ。
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