イケメンエリート、最後の独身


「ホヨンさん、ありがとうございました」

 萌絵はブースに籠って仕事をしているホヨンへそう声をかけた。右手にはしっかりとホヨンのスマホを握りしめている。

「いいよー スマホはそこに置いといて」

 ホヨンはそう言いながら椅子を回転させて、萌絵を真っすぐに見る。そして、意地悪な目をして微笑んだ。

「とにかく謙人さんとしっかりと話をする事。
 萌絵が二週間後にドイツへ発つ事は決まってるわけだから、謙人さんの純粋な初恋を無視するような事だけはやめてほしい」

 萌絵はホヨンの本心が分かった気がした。ホヨンは謙人の事を一番に考えている。尊敬と恋愛のはざまの中で。

「そんな… 無視なんて絶対にしません。
 ちゃんと、しっかりと話します。後悔のないように」

 ホヨンは萌絵の言葉に大きく頷いた。その言葉、絶対に忘れないぞと念を押すように。


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