太陽と月の恋
電話
剛くんから電話があったのは18時前だった。

「剛くん」と表示された画面に躊躇ったけど、焼きうどんを口にすすりながら電話に出た。

「もしもし?」

反応がない。口の中のうどんを数回噛み切って飲み込む。

「もしもし?剛くん?」
「もしもし」

ゴワゴワにかすれた声に驚く。

「え、泣いてない?」
「ちょっと泣いてる」

えっ、泣きたいの私じゃなかったっけ。

私が言葉に詰まっていると、電話の向こうで勝手に剛くんが話し出した。

「なんか、もう、俺から離婚歴は消せないからどうしようもないんだけど、葵ちゃんへの気持ちには全く嘘はなかったし、自分でもそういう悪気があったとかではなくて、でもどっかで言わなきゃいけないなって思いながらも言えてなかったのは事実だし、それで傷付けたから本当にごめん」

私は空気に耐えられずうどんをまたすする。
なんでこんなうどんを不味くするような電話をかけてくるの。

「うん、大丈夫?」

なんで私ってば剛くんを気遣ってあげるの。

「俺本当、不器用だし、ダメなとこあるし、でも葵ちゃんのことは本当に好きだから、すげーワガママだと思うけど、こんなことで別れるのは絶対嫌だし」

合間合間に剛くんの鼻をすする音がする。

えーずるい。

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