クールな許嫁の甘い独り占め。



突然現れた男は白凪咲玖の前に立ちはだかり、わけわかんねぇこと吐かしやがる。


「はぁ?なんだてめぇ」

「こっちの台詞なんだけど。咲玖のこと傷つけるなら、容赦しない…」


こいつ優男っぽく見えるけど、オーラは全然違えな…。
絶対零度の氷点下でも獲物を捕らえようとする、雪豹みたいな――…

その男は白凪咲玖を連れ、その場から立ち去った。
一度も俺の方を振り返ることはなかった。



「…っ、なんなんだよ…」



なんでこうなるんだ。
やっと会えたのに。

その隣にいる男は何なんだよ。
お前はいつになったら俺の方を見るんだ。

もう、お前の中に俺はいないのかよ――…


何でも手に入れられた俺が、未だに手に入れられないもの。
手に入れる方法がわからないもの。

唯一思い通りにいかないもの。

本当は傷つけたいわけじゃないのに、口から出る言葉はお前の表情を曇らせてばかりいる。


これは呪いだ。
呪いのように囚われ続けている、俺の初恋――。



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