無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない


「ほーんと! 生まれつき、お金があるって得ですよね〜」


 クスクス笑うシャルロット様は、つかんでいた私の手をグイっと引っぱり、耳元でささやいた。


「私、あなたみたいな人、大嫌いなんです」


 今までと違う憎しみが込められた声色で呟かれ、背筋にゾワリと冷たいものが走る。


「は、はなして!」


 握られた手を強めに引くと、彼女はフッと笑って手をはなす。私は強く引っ張ったせいで後ろによろめき、立っているだけでやっとだ。風がざわざわと強く吹き始め、言い知れない不安が襲ってくる。



「あなたより私の方が、グレッグ様にピッタリですね。私なら彼を本当に理解してあげられる。ニセモノのあなたより、私の方がグレッグ様を幸せにできるわ」



 シャルロット様はフンと嘲るように笑った。しかしそれも一瞬のことで、彼女の表情はまたかわいらしい令嬢に戻る。呆然と立ちつくす私の前で、彼女はそれはそれは美しいカーテシーをして、「ごきげんよう」と去っていった。
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