無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない

 会場中がどうしたんだとざわめき始め、前へ前へと人が集まり始める。私もつられて前に行くと、見知った人の背中が見えた。


(え! あれは、まさか……!)


「なんと! 今年は参加資格1年目の騎士から優勝者が出た! これは前例のない快挙である!」


 おおお! とまわりから驚きの声があがる。あまりものを知らない私でも、この武術大会で優勝することの凄さは知っていた。それに最近は有名なベテラン騎士が何年も連続して優勝していたはず。私は胸の高鳴りが止まらず、次に呼ばれる名前を今か今かと待っていた。


「第一騎士団所属、グレッグ・ラウザー! 前へ!」
「はい!」


(グレッグ! すごいわ!)


 グレッグは群衆の中を堂々と歩き、陛下の前でひざまずく。メダルを受け取りこちらを振り返ると、ホールにいる人が大きな拍手でグレッグを讃えていた。


「グレッグ……!」


 グレッグとの確執などすっかり忘れ、感動に目がうるむ。おめでとうを言いたくて人をかき分け急ぐけど、たくさんの人に囲まれているグレッグにはなかなかたどり着けない。


(早く! 早くグレッグに会いたい!)


 しかしやっとグレッグの顔が見えたと思った時、彼の隣にはシャルロット様がいた。
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