無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない

 彼女は訝しげな視線を送る俺と目が合うと、ニコッと笑い「良いアイデアじゃないかしら?」と自信満々の様子だ。10歳とはいえ、その頃には婚約者がいる友人もいた。レイラが俺の家に遊びに来たことも、相性を見る軽いお見合いのようなものだと理解していた。


「僕がお人形を集めたり、刺繍を作るのを馬鹿にしないなら、君と結婚したい」
「そんなこと? 馬鹿にするどころか尊敬するわ。むしろ私のためにいっぱい作ってもらわないと!」


 どうせ嫌がられるだろうと思って言ったのに。レイラは俺の言葉を聞いて「これでラクになるわ!」と大喜びしている。しばらくそうして喜んでいた彼女はくるりと俺の方を振り返ると、満面の笑みで俺に手を差し出した。


(今の笑顔だけで、じゅうぶん女の子らしいと思うけど……)


 輝くようなレイラの笑顔にドキドキしながら、差し出された手を握る。

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