無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない


「君は婚約者のいる男性を、暗がりに連れ込むのが趣味なのか?」
「え?」
「俺と君は趣味が合わない。俺が好きなのは一途に相手を愛するヒロインだ。君のように婚約者を裏切るようなことをすすめるのはロマンティックではない!」


 シーンと静まり返った会場に、俺の言葉が響き渡った。ほぼ全員が俺達の方をじっと見つめている。こそこそと話し始める者もいて、会場はざわめき始めた。


 しまった! レイラを侮辱するようなことを言われて、思わず大きな声を出してしまった。俺のことはどうでもいいが、レイラに何か影響が出ると困る。あせっているとシャルロット嬢が、わざとらしく顔をゆがめ泣き始めた。


「わ、わたしぃ、そんなつもりじゃあ……」


(どうしたらいい? ここで彼女を慰めると、俺達に恋愛関係があると思われそうだ……)


 シャルロット嬢が泣き始めたことで、まわりはいっそう俺達に注目し始める。焦れば焦るほどうまい解決策も思い浮かばず、ただ立ちつくすことしかできない。


(誰か助けてくれ!)


 そう思った瞬間、カツンとヒールの音を大きく響かせて、女性が2人割り込んできた。

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