【砂の城】インド未来幻想
◆ 序 章 ◆

[輪廻]

 インド――ヴァーラーナスィー。

 神々の聖地として名高い、三日月を(かたど)った小さな街。幾千幾万という夜を越え、時を流れる巡礼の民が、昔と姿を変えることもなく朝――夜明け前の聖なる河ガンガーへ向け列をなしていた。

 ヒマラヤから流れ出で、ベンガルの海へと注がれる万里の調べ。もはや岸とも分からぬ(なら)された沐浴場(ガート)では、病に(むしば)まれた低カーストの男達が、浅黒い身に一枚の薄衣(うすぎぬ)(まと)い、(けが)れた骨と皮だけの手を合わせ神へと祈る。

 痩せ細った頬から零れ落ちそうにギラつく(まなこ)の中には、雄々しき蒼き峰――ヒマラヤの神シヴァ以外に、今や心の()り所は存在しない。

 彼等は皆揃って北を仰ぎ、前世同じく捧げたであろう、崩れた屍骸の混ざった(すな)(すく)っては投げ、ひたすらシヴァ神のみに救いを求めていた。


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