【砂の城】インド未来幻想
 金属らしき四角い箱の前には、二人の男が佇んでいた。やがてその(おもて)がこちらに向けられていることも見てとれたので、二人の少女と二頭のラクダが近付いていることは把握しているようだ。男達の格好は砂の城の者と分かる白いマントを身に着けている。が、その顔はターバンの裾をグルグルと巻き付け、表情は目元のみしか読み取れない。更にその手が胸の高さにまで掲げる物は、おそらく銃身(バレル)の長いライフルのような武器だった。

 銃口(マズル)は依然天へ向けられているが、それを認めた少女達の緊張は高まっていった。手前十メートル程でシュリーはラクダを止め、自身とナーギニーの身を大地に降ろした。自分の荷を肩に掛け、沈黙するナーギニーの左手を取る。ギュッと握り締め、合わせた視線と共に――「さ、行きましょ」――そう言ったシュリーの緊迫が、さっとナーギニーの瞳に伝染(うつ)った。

 ナーギニーは無言で頷き、深い息を吐きながら一度瞼を閉じた。これから一生を決める一週間が始まるのだ。


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