【砂の城】インド未来幻想
 やがて目前と化した宮殿を見上げた。夕闇に包まれた白大理石は、脳裏に遺されたあの夜のタージ=マハルとクロスし、途端胸が高鳴り出した。青年(シヴァ)と出逢ったあの夜――。

 基壇への階段を上り、宮殿の入口を飾るアラビア語のコーランを刻んだ象嵌(ぞうがん)の下、内部へ(いざな)う開放されて「いるべき」空間には、本来ある筈のない大きな扉が立ちはだかっていた。植物を(かたど)った繊細な浮彫細工(レリーフ)と、全てを映してしまいそうに磨き上げられた滑らかな壁面、しかして奇妙な呼び(りん)の音が聞こえる。僅かにきしむ音を立てながら、ゆっくりと迫りくる扉に身を退けたナーギニーは、墓廟の中に違う世界を見た。いや、此処は「墓」などではないのだ。絢爛(けんらん)豪華な宮殿の中身は、シャニの為だけに存在する選ばれし娘達の「後宮(ハーレム)」だった――。







◆以降は2015年に(他サイトにて)連載していた際の後書きです。

 いつもお付き合いを誠に有難うございます!

 今話文末のタージ=マハルは、無料使用OK画像から頂いた物に、黄昏(たそがれ)らしい加工を施してみました。さすがに綺麗な写真です♪


< 146 / 270 >

この作品をシェア

pagetop