【砂の城】インド未来幻想
「はぁ~一気に喋ったら喉が渇いたわ。ナーギニー、水差しから飲み物を頂いても良いかしら?」

 取りにいこうと慌てて立ち上がるナーギニーを手で制して、シュリーは自ら(おもむ)いた。しかしワゴンの手前で「あっ!」と声を上げ、驚いたナーギニーも結局その後に続いていた。

「ちゃんと食べていると言っていたのに……どうして半分も残しているの? これでは夜中にお腹が空いても仕方がないわ」

 (いぶか)しむような表情で振り返ったシュリーに、困った笑顔を返すばかりのナーギニー。やがて語られずして真相に行き着いたシュリーの(おもて)は、ゆっくりと涙に濡れていった。その腕は再び強くナーギニーを抱き締めていた。

「あり、がとう……わたしの為、だったのね……!」

「シュリーこそ……本当にありがとう……ずっと、会いたかった……」

 抱き締め返す掌が、シュリーのブラウスをギュッと握り締める。そして――

 お互いの首筋に触れた涙が乾くまで、二人の抱擁はほどかれることはなかった――。


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