【砂の城】インド未来幻想
 一族の目指す墓廟の周りが祭りの参加者で溢れ返った頃、ナーギニーの家族も万事整い、父親が勢い良く扉を開け放った。

「ナーギニー、とうとう貴女の出番が来たのよ……」

 母親は優しく甘い口調で、けれど視線はあくまでも厳しく、ナーギニーの小柄で柔らかい人形のような足に、革のサンダルを履かせてやる。

 少女はもういつ触れたのかも分からない熱い砂を――それ以上に焼ける砂塵を、身体に晒すことになるとも知らずに、ゆっくりと踏みしめつつあった――。



[註1]ムスリムについて:非常にデリケートな時期(元々今作は2015年に連載しておりました)でありますので、少々戸惑いましたが・・・こちらの作品はもう二桁の年数昔に思いついた構想でございます。タージ=マハル自体が遠い過去の建造物とは云え、ムスリム美術の賜物(たまもの)である為、以前のプロットは変えずに掲載させていただきます。作者自身は宗教思想や観念に対し偏見や他意は有り得ず、一文化と捉え使用していることを何卒ご理解ください。


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