【砂の城】インド未来幻想
「ですが……息子も成人して久しい。そろそろ外へ出そうかと思いましてね。最近何処の管轄を任せようか思案しているところでした」

 そうして再び手の上をかき混ぜ始めたシャニに、少女の呼吸は止まりそうになった。

「私はどうしても貴女を手に入れたい……もはや手段を選んでいる場合ではないのです。貴女が私を受け入れてくだされば、イシャーナを貴女の故郷アグラの領主に任命致しましょう。さすれば、貴女が時々故郷を訪れる際、再会することも叶う筈。ですが……貴女が拒むのであれば……ガンガーの源流近くガンゴートリーにでも追いやってしまおうかと。あの地はヒマラヤから吹く渇いた風が、とても冷たく厳しいそうです。……温室のようなこの国で育った息子など、ひとたまりもありませんな」

「そ……んな――」

 衝撃を小さな肩に突き落とされたナーギニーは、それでも(かす)かに言葉を発し、何とか顔をもたげてみた。途端視界を埋め尽くす(まだら)な笑顔。不敵な微笑みが、必ずそれが実行されるであろうとの確信をもたらしていた。


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